オーディオ・ベースマン見たり聴いたり シベリウス・ヴァイオリン協奏曲・・北欧・フィヨルドを連想させる曲だが…。

オーディオ・ベースマン見たり聴いたり シベリウス・ヴァイオリン協奏曲・・北欧・フィヨルドを連想させる曲だが…。

音楽家、自己の”音色”をいかに持つことができるか、聴かせるか、また、それを生涯、維持できるかどうか、それは難しいことなのかもしれない。2月18日、諏訪内晶子さんの実演を聴いてそう思った。

奏者は、カミラ・ウィックス。東芝盤(GR-2202)のジャケットが味気ない。で、ヤフオク出品者のsan257jpさんがオリジナル盤のコピーをおまけでつけて下さいました。

諏訪内さんのシベリウス。オーディオ的には、高域の伸びが素晴らしい。高SN比、高解像度に裏打ちされたヴァイオリンの高域の響き。ダンピングが利いた中低域の締まり。音の出だしは、ハイレスポンス。細身だが音の輪郭が適度に張り詰められ、緊張感、静寂感、透明感に満ちた音質。そして、演奏は、例えて言えば、DOHC(ダブル・オーバーヘッド・カムシャフト)・1600CC・ミッドシップ・エンジン・ライトウエイト・スポーツカー(注)といったところか。軽量な車体による瞬発力、バランスに優れたミッドシップレイアウトが可能とするコーナー(曲がり道)での卓越した回頭性能。低い車高がもたらす、タイヤが路面に吸い付くグリップ性能。車体剛性は、強固で、ヴァイオリンの胴鳴りを抑える諏訪内さんのテクニックに相通じるものがある。その優美、優雅なスポーツカーは、諏訪内さんにイメージにピッタリ。北欧、フィンランド。数万年の年月をかけて氷河が造り出したフィヨルド(入江)。凍てつく大気の中、その寂寞とした紺碧(こんぺき)の海面に浮かんだ船上から、見上げる蒼穹(そうきゅう)。断崖には一輪の白い百合の花。楚々(そそ)として、凛冽(りんれつ)、清冽(せいれつ)な諏訪内さんの演奏。僕が持つ、フィンランド・フィヨルドのイメージにピッタリ。

一方、カミラ・ウィックスさんのシベリウス。オーディオ的には、帯域が狭い、繊細な高域に難があり、帯域全体のスッキリしたSN比が欲しいし、ダンピングが弱い。結果、コントラスト表現が、もう一つ。とはいうもののこれでも十分なような気がする。これだったら、オリジナル盤に拘(こだわ)る必要はないかもしれない。演奏は、情念、情感を込め、妖しく、きらめくようなヴァイオリンの音色。ヴァイオリンの音、歪んだところもある。音の輪郭をハッキリさせるテクニックは、諏訪内さんの方が、ずっと上だろう。また、第三楽章、頭のヴァイオリンの音は、音楽大学の学生が弾いているような感じ。「静」の諏訪内さんに比して「動」のカミラさんといったところ。個人的には、カミラさんの演奏が好み。音楽に表情・感情があるような気がする。聴き比べると面白い。ここに、F1・フォーミュラー・カーのハイフェッツが参戦すると(聴き比べると)、より楽しめる。なお、諏訪内さん、実演に接した際、ヴァイオリンの胴鳴りが制御できてない、音のストップ&ゴー、キレが無いように聴こえた。

(注)ロータス・ヨーロッパという車をイメージしています。