オーディオ・ベースマン見たり聴いたり ワルツ・フォー・デビィその②・・客のまばらなライブハウスの名演に哀愁を・・

ワルツ・フォー・デビイ。国内盤。<リバーサイド・オリジナル・レコーディング・シリーズ>60 SMJ-6118(SRS-6060)のライナーノーツ(解説)。レコードプレイヤーは、パイオニア エクスクルーシブ P3。中古品、45万ほど。

「・・ビル・エバンスは、度々来日して ”マイ・フーリッシュ・ハート” や ”ワルツ・フォー・デビー” といったビル・エバンスのおはこを演奏しているが、わたしのきいた限りでは、いずれもレコードの演奏に及ばないものであり・・」このLPの解説を担当された方、土田三郎さんが書いている。「ジャズの魅力はライブでした味わえない」という事を否定し、そして、「・・ジャズ・レコードは複製であろうが、その重みは時として実演を上回ることもがある」ともいう。「・・稀有な時間をレコードに捉えることも十分可能なのである」と続ける。

客のまばらな店内。「ビレッジ・ヴァンガード」に来たというだけで曲を聴かず世間話に花を咲かせる客。ウエイターかウェイトレスか、客のグラスを片付ける音(?)。曲が終わる度におギリの拍手が「パラパラ」と送られる。一曲目、「マイ・フーリッシュ・ハート」が終わると「オッ、今日のバンドはちょっとイイかな」という感じもなくもないが・・。最終6曲目の「マイルストーン」。談笑する客の話題が盛り上がっているためか、「ざわめき」が大きくなる。一方、ビル・エバンスのピアノとスコット・ラファロのベースのメロディの掛け合いにも「(雑音に)負けじ」と力が入ってくる。演奏がフェイドアウトする中に浮かび上がる「嬌声(きょうせい)」。演奏者と聴衆との交感など感じない。思わず、無常を感じるのは僕だけでしょうか?。

まるで絵に描いたように、物語でも語るように、「無名のバンドが、音楽に無頓着な客の前で、一世一代、稀有な演奏をしている」見本のようなLP。客のまばらなライブハウスが名演に哀愁を与える・・。そこが最大の魅力かも・・。